いつか あなたを わすれても
少子高齢化の日本、ご来院の皆さまの中にも高齢者さまのケア、そのさなかにある方々がたくさんいらっしゃいますね。たいへんそうだけど一生懸命であたまが下がります。
ご両親さま、そのいずれかがお年を召されて体力が落ちたりするのを見るのは切ない、また大切な方々の記憶が薄れて、あなた様のことがわからなくなるのもいっそう切ないかと思います。
タイトル「いつか あなたを わすれても」は絵本です。作者はあの直木賞作家
桜木 紫乃さんで、ふだんお書きになる本はちょっと大人っぽいです。
この絵本は、認知症で娘や孫のことがわからなくなっていくおばあ様を、孫の目線で優しく書いた絵本です。
本の帯には「みんな少女だった」
おばあ様(絵本の中ではさとちゃんと呼ばれています)もその娘で孫のお母さんもこのことは同じ、そして孫自身もいずれは年を重ねていく。このことを、
「これは たいせつな たいせつな わたしたちの じゅんばん 」と表現されています。
おばあ様が色々忘れて思い出せなくなってしまってもそれは悲しいばかりではなく、
「みんなのことをわすれる日は わたしたちとのおわかれを こわがらずに かなしまずに すむ日」とあります。
特に女性はこの方面で何かと頼られることが多いようで、診療の際に色々お話をお伺いします。今、目の前に、弱っていく方を見ている、記憶の薄れてしまった方を見ている、その方々にこの絵本の上記言葉をお伝えしたいと思いました。
看病や介護は今、多すぎてあまり話題にされないけど、あなた様がお相手しているその方は、表現がどうであれ、記憶が薄れていってもあなた様のしてくれたことは良くおわかりと思います。そして心のなかではとても感謝・喜んでおられると確信しています。
今、どなたかを看病、介護しておられる皆さま、あなた様がやっておられるのはとても高尚で素敵なことだと思います。
人間にも順番がある、これは大自然の真っ当な流れですから、あなた様の努力は大自然に素直したがっていること、すべて一つもまちがっていません。いつかふりかえった時今日の努力はとても輝いていることと思います。 ムリをせず毎日を大切にね。