「声」で泣いた日
皆さまお久しぶりです。ごぶさたして失礼いたしました。
皆さま緊急事態宣言が解けておかわりなくおすごしでしょうか?
お家にご高齢者さまがいらっしゃるから「1年半外出しなかった、だから久しぶりに来ました。」とおっしゃる方々も多くお偉いなあと思いました。
私は昨日も今日も、たいへんなご遠方からまたお近くから10年ぶり、20年ぶり…のご来院者さまを続々とお迎えし、身に余る幸せな毎日を送っております。
お伝えしたいことは日々たくさんあったのですが、夏の終わりはコロナへの参画(自宅・ホテル待機者へのオンライン診療)、その後ありがたいことに研究のお誘いが重なり…研究のことは、いずれお伝えできるようになったら、あなたさま=当院ご来院者さま方に一番にご報告させていただきますね。
さて、緊急事態宣言が解除されて、たいへん重厚な対策の下ではあっても、じょじょに良い舞台に出会えるようになりました。
この秋、私が聴いたのは「世界三大テノール」のお一人、ホセ・カレーラスさんです。まさかコンサートがあり、まさか開催されるとは思ってもいなかったような時期なので会場へ入っただけでワクワクいたしました。そして「本物」が登場、第一声から、不思議なことに言葉はわからないのに、不思議なことに目尻から涙がこぼれおちました。ホール全体、ホール一個が「声」と言う一つの楽器のように感じるのです。
今74才でいらっしゃるそうですが、やはり人間技とは思えない声量、声質、発声…お声はもちろん歩くお姿も全く年齢を感じさせません。世界三大テノールの中では最もお若く「華奢きゃしゃ」なイメージがありましたが、むしろ胸板は厚く背筋はまっすぐ。何しろお声にムリ、無駄がないので、よけいなモノが入らず浸りきることができました。
皆さまご存じのように、ホセ・カレーラスさんは絶頂期に白血病と言う病を得て、困難な道を歩まれ、その後舞台に復活された方です。当時は世界中が「あの声はどうなる?」と天を仰いだものでした。その後祖国スペインにホセ・カレーラス白血病財団を設立され、もちろん日本でも同じ病の方々にお声をかけたりされています。
「物語」を背負い、あのお年でも変わらぬお声で歌われるその方、アンコールはどうなったと思われますか?何度登場されたか数えきれない覚えきれないほど、くりかえしくりかえし舞台に登場され、初めのうちは想定どおりのアンコール曲、そこから右手を高く上げて聴衆にお応えになったり、またピアニストさんと耳打ちして曲を決めて歌ったり、次はピアニストさんとお二人で登場されホールすみずみまで視線をくださったり…やはりあれだけの方は、いつどこへ行っても、聴衆が喜びを表現する限り、絶対に一つも残さず応えようとなさるのだな、と感じました。あの世界三大テノール ホセ・カレーラスさんが、です。
最近はデジタル音楽が人気のようですね。いろいろ新しい良いモノがでてきますから、楽しいです。でもたまに、本格的な音楽、舞台もいかがでしょう?そこには同じ人間とは思えないような、しかも鍛え磨きぬかれた美しい声、音色、動きがありますよ。
きっとあなたさまの一生の宝物になると思います。