このページでは政治や宗教については触れておりません。とてもむずかしく、どのように書いてもどなたか様を傷つけるようなことになりかねないからです。以下、侵攻の話題からではありますが、内容は「演説」=「言葉で表現すること」となります。
昨日、ウクライナ・ゼレンスキー大統領のリモート演説が国会でありました。約12分。
「一般市民、女性や高齢者、子供までが犠牲になっている、どうか協力してください。……ありがとう。ウクライナに栄光あれ。日本に栄光あれ。」胸に手を当て平和を祈るクライマックス。心からの叫びがまっすぐに伝わってくる、さらに日本のことを良くご存じ、故郷を失った福島の境遇に共感、そして最も大切な国際協力をくりかえし呼び掛ける……連日、たくさんの涙、泣き顔を見ている者にとっては充分すぎるくらいの説得力を感じました。
ここでお話は、侵攻ではなく「演説」の方向へと転換させていただきます。
ゼレンスキー大統領はこれまでにも、窮状をうったえ、理解と協力を求めて、欧米あてにリモート演説をされてきましたが、いずれもstanding ovationが延々とつづきました、もちろん昨日の日本でも。話している間、一瞬たりとも聞く者から目をそらさない、まるで一人一人が自分の目を見つめながら説得されているような気分になります。大切なことを言うとき、話の内容を変えるとき、少し間を置いて話される、その間の取り方は微妙なタイミングでしかし絶妙にしっかり印象に残るように、発声が良く、抑揚が効いている……
まるで「演説」のお手本のような表現をされていて、その内容(原稿作成者も上手い)はもちろん「ひと様に話す」必要のある者には勉強になることがたくさんありました。
今から20年位前、初めて全米皮膚科学会で「口演」する機会を与えていただいたとき、当時の私はまさに一発KO状態でございました。内容は前もって精査・採用された上でのことなので不安はありませんでしたが、何しろそれまでに日本語でも、肝心な「スピーチ」訓練を受けていなかったからです。U.S.A.や欧州では幼い頃から日常的に行われている「言葉で表現する」「人前で話す訓練」が、日本では一般高校や大学、医学部でさえ一つもありませんでした。常に様々な患者さま方に様々な説明を、お相手を理解した上で伝えなければならない医師候補に「人前で話す」どころか「言葉で表現」の教科・訓練はなかったのです。
初めてアメリカで講演するにあたり、声の出し方、間の取り方、姿勢、視線の配り方…これらを叩きのめされゼロからの「お勉強」となりました。発音については不思議なことに、学会専門用語には慣れているので全く苦労がありませんでした。ただ、挨拶やらユーモアを入れる時の発音をこれまた「こてんぱん」に叩き直され、日本を出発する頃にはボロボロ状態での旅立ちとなりました。これは2019年(現地での口演ができた年)まで変わらず。
今は、お若い方々、MLB大谷選手やジャンプの高梨選手(英語が上手!)…が堂々と話したりインタヴューに応えられたり素晴らしいと思います。やがてコロナ禍が明けたら「きちんと話す」ことがいっそう大切になると思います。私は彼らを見習いたいと思っています。